淡いピンクの衣装で頬に手を添え、ほほえむ松岡茉優さん

俳優松岡茉優さん

準備をした自分しか、現場では信頼できないから

「30歳という年齢を一つの区切りとするのが、もう長い間変わっていない価値観だなって。自分の世代くらいまでの話かと思えば、私より若い人も“30までに”と言う。世代を問わないこの感覚ってなんなんだろうと、ずっと考えていました」

11月公開の映画『男ともだち』で、人生に行き詰まりを感じている29歳の主人公・神名(かんな)を演じた松岡茉優さん。脚本を読んだ時の印象を聞いた際に、返ってきたのが冒頭の言葉でした。

「人生は百年に伸びたのに、ここは伸びない。何者かにならないといけないような焦りってなんなんだろうと思います。人って、“自分はこうなんだ”というところがわからなくなると、本当に足元が揺らいでしまうのかなって」

悩む神名は、成田凌さん演じる男ともだち・ハセオと過ごす時間の中で自分を見つめ直していきます。では松岡さん自身にとっての、自分を見つめ直す時間は?

「舞台をやっていた時、稽古期間中あまりに余裕がなくて稽古場、炊事、洗濯、睡眠、起きたらまた稽古場……という毎日を過ごして。ある日ふと“あれ、友達と喋りたい”となって近所に住む友達と会ったら、もう濁流のように悩みや日々思っていたことが出てきたんです。受け止めてくれた友達に何より感謝ですが、やっぱり自分だけでは処理できないものを他者に聞いてもらうのは、何かを乗り越える上でかけがえのないものだと思います」

淡いピンクのセットアップ姿で、こちらを見てほほえむ松岡茉優さん

子役でデビューし、すでにキャリア20年以上。複雑な心情を繊細に表現する、高い演技力で評価されている松岡さんですが、演技や役作りについては「私が一番信頼しているのは“準備”なんです」と言い切ります。

「現場に行ったら、準備した自分しか信頼できない瞬間があります。とくに舞台をやらせていただくと思うのですが、お客様の目の前で登場人物としてその時間を生きるのには、やはり入念な準備期間が必要で、それがあるから立てるのだなと思って。それは映像も同じだと思います。尊敬する先輩たちは皆さん、準備を大切にする方たちばかりなので、私もそれを追ってきたのかもしれません」

どんな話題になっても、言葉の端々にお芝居への情熱と真摯な姿勢がにじむ松岡さん。今後の活躍からますます目が離せません。

プロフィール

1995年生まれ、東京都出身。幼少期に子役としてデビュー、以降映画やドラマ、バラエティなど幅広く活躍。主な出演作に、映画『勝手にふるえてろ』『万引き家族』『蜜蜂と遠雷』『愛にイナズマ』、ドラマは『あまちゃん』『ギークス/GEEKS』『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』など。Netflixシリーズ「ダウンタイム」が配信中。

インフォメーション

映画『男ともだち』

映画『男ともだち』の一場面。クッションに頭をあずけた神名と、隣で笑いかけるハセオ
© 2026『男ともだち』製作委員会

直木賞作家・千早茜のベストセラー小説を監督・三島有紀子、主演・松岡茉優、共演・成田凌で映画化。京都・富山・広島ーー男ともだちと過ごす”3つの夜”の中で、主人公は自分の人生と向き合っていく。11月6日(金)より新宿ピカデリー他にて全国ロードショー。