監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
薄毛で悩んでいて、サプリメントの利用を検討中の人は少なくありません。またサプリメントで薄毛の悩みが解決するのか、疑問に思っている人もいるでしょう。
今回は薄毛に対するサプリメントの効果や、摂取する際のポイントを解説していきます。ぜひ参考にしてください。
目次
サプリメントは薄毛対策に効果があるの?
(出典:(1)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
(出典:(2)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)
サプリメントは薄毛対策に一定の効果があると考えられます。
毛髪は毎日の食事で摂る栄養素をもとに育ちますが、不摂生などで食生活が乱れると、十分な栄養補給ができない恐れがあります。そんな場合にサプリメントで毛髪の原材料となる栄養素を補えば、育毛サポートに効果的です。
とくに血流をよくする働きをもつ栄養素を含んだサプリメントは、髪を生み出す毛母細胞に栄養が届きやすくなる効果が期待できます。
薄毛対策にはケラチンを含むサプリメントが役立つ
(出典:(3)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)
薄毛対策にはケラチンを含むサプリメントが役立つでしょう。なぜならケラチンは毛髪の主成分であり、毛髪中の80~90%を占めるためです。
ケラチンはタンパク質の一種で、18種類のアミノ酸から構成されています。通常の食事でも摂取可能な成分ですが、比較的消化吸収されにくい性質をもち、乱れた食生活では継続的な摂取が難しいため、サプリメントで効率よく補うのがおすすめです。
薄毛対策に役立つ成分・栄養素一覧
(出典:(4)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)
(出典:(5)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
(出典:(6)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)
(出典:(7)Inhibition of 5α-reductase activity in human skin by zinc and azelaic acid)
(出典:(8)ビタミン総論)
(出典:(9)ビタミンEによる凍瘡の治療経験)
薄毛対策に役立つ成分にはケラチン (タンパク質) 以外にもさまざまなものがあります。以下の表にまとめたので、ぜひサプリメント選びの参考にしてください。
ケラチン (アミノ酸・タンパク質) | 毛髪の原材料となる。 |
---|---|
亜鉛 | 毛髪の主成分であるケラチンの合成をサポートする。男性ホルモンが過剰に薄毛を招きやすい組成に変化するのを抑制する。 |
ビタミンB2 | 成長促進因子として働き、頭皮や毛髪を健やかに保つサポートをする。 |
ビタミンB6 | アミノ酸の代謝を助け、頭皮や毛髪の生成をサポートする。 |
ビタミンA | 頭皮や毛髪を健やかに保つサポートをする。 |
ビタミンE | 血行を促進し頭皮や毛髪に必要な栄養素を毛母細胞に届ける。ビタミンAなどの栄養成分が酸化するのを防止する。 |
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【要注意】薄毛の人が食べてはいけない食べ物7選!薄毛改善に役立つ食べ物も紹介
サプリメントを飲むだけで髪が生えるわけではない
(出典:(10)健康食品の正しい利用法)
不足している栄養素を効率的に補えるサプリメントですが、ただ飲むだけで髪が生えるわけでない点には注意が必要です。
サプリメントは医薬品とは異なります。あくまで栄養補給をサポートする食品であり、AGAなどの病気を治す薬ではありません。
サプリメントを薬の代わりに使用することで、病気の治療の遅れや症状の悪化につながる恐れもあるため注意が必要です。
薄毛対策でサプリメントを服用する際のポイント
薄毛対策の一環としてサプリメントを服用する際には、いくつか覚えておきたいポイントがあります。そのポイントは次の通りです。
- 忘れにくいタイミングで飲む
- 過剰摂取に注意する
- 複数商品の併用を避ける
- 薬との併用時には医師に相談する
- アレルギーに配慮する
それぞれ具体的に解説していきます。
忘れにくいタイミングで飲む
サプリメントは忘れにくいタイミングで飲みましょう。
サプリメントは医薬品でないため、飲むべきタイミングは明確には定まっていません。しかし食事だけでは不足しがちな栄養素を補う意味では、サプリメントは食事のように毎日継続することが大切です。
朝食前・夕食後・就寝前などのライフスタイルに組み込み、自分なりにできる限り忘れにくいタイミングを設定しておくことをおすすめします。
過剰摂取に注意する
(出典:(11)サプリメント)
(出典:(12)日本人の食事摂取基準 (2020年版) )
サプリメントは過剰摂取しないよう十分配慮しましょう。
サプリメントは薬ではないとはいえ、通常の食事ではまず摂れないほど大量の栄養成分を簡単に取れてしまいます。過剰摂取してしまうと健康被害を引き起こす恐れも否定できません。
たとえば特定のアミノ酸を大量に摂取しすぎると、体内のアミノ酸のバランスが崩れて下痢などの体調不良を招くかもしれません。ビタミンEなど脂溶性のビタミンは体内に蓄積するため、大量摂取で過剰症を引き起こす恐れがあります。
また亜鉛を過剰摂取した例では、銅や鉄の吸収阻害による貧血や吐き気、HDLコレステロールの低下などの症状が出たという報告もあります。
成分の含有量は各サプリメントによって異なるので、パッケージなどに書かれた摂取目安量を必ず確認しましょう。
複数商品の併用を避ける
(出典:(13)健康食品の正しい利用法)
複数のサプリメントを併用するのは避けましょう。
魅力的な薄毛用サプリメントは数多くありますが、商品によっては成分が重複しているも多々あります。また目的の異なるサプリメントだったとしても、含まれる成分が重複しているケースは十分に考えられます。
栄養素の過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす恐れがあるため、複数のサプリメントを同時に摂取するのはおすすめしません。サプリメントは欲張らずどれかひとつに絞って摂取しましょう。
薬との併用時には医師に相談する
(出典:(14)健康食品の正しい利用法)
サプリメントと薬を併用したい場合には、事前に必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
サプリメントの成分によっては薬の効果や副作用に影響を及ぼす恐れがあります。たとえばビタミンB6は抗てんかん薬の効果を、中性アミノ酸は抗パーキンソン病薬の効果を弱めるといわれているので注意が必要です。
薬との併用リスクはサプリのパッケージには記載されていないことも多いため、自分自身で信頼に足る情報を集めておく必要があります。AGA治療薬をはじめ薬を服用している人は、薄毛サプリの利用を検討する前に必ず医師や薬剤師に確認しておきましょう。
アレルギーに配慮する
(出典:(15)健康食品の正しい利用法)
サプリメントの摂取時にはアレルギーにも配慮しましょう。
人によっては配合成分が体質に合わず、アレルギーを起こす可能性があります。
とくに「天然由来」「ナチュラル志向」などと聞くと体によさそうなイメージから無条件で信用してしまう場合もありますが、天然由来の製品が必ずしも合成品より優れているとは言えません。
イメージに惑わされず、成分を精査したうえで利用しましょう。
薄毛対策のサプリメントの選び方
(出典:(16)健康食品の正しい利用法)
薄毛対策のサプリメントを選ぶ際には成分表をチェックのうえ、頭皮や髪の健康に有効な栄養素の記載があるものを選びましょう。「○○抽出物」などのあいまいな表記しかなく、具体的な栄養成分がはっきりとわからない製品もあります。
またそれぞれの栄養素がどの程度配合されているのか、含有量をあわせて確認しておくのもポイントです。十分な量の栄養素が配合されていない製品は期待した効果が得られない可能性があり、反対に含有量が過剰な場合は健康被害を受ける恐れがあります。配合量の表示自体が無い製品は、そもそも生産者側で品質管理できていない可能性も否定できません。
製品の配合成分や含有量などについて疑問が生じた際や、サプリの利用中に万が一不調を感じた際にいつでもコンタクトできるよう、製造会社の連絡先もしっかり確認しておきましょう。製造者・販売者・輸入者の記載は食品衛生法で義務付けられているため、これらの表示が不十分な製品の購入はおすすめしません。
このように効果が期待できるサプリメントを見極めるポイントはいくつかあります。これらのポイントをクリアした商品を見つけたら、最後に価格を確認しましょう。
サプリメントは食事で不足した栄養素を補うもののため継続する必要があります。どんなに品質のよいサプリメントだとしても、金額的に無理があって続けられないのでは意味がありません。続けやすい価格設定のサプリメントを選ぶことも大切です。
サプリメント以外の効果的な薄毛対策方法
ここからはサプリメント以外の効果的な薄毛対策方法を紹介します。薄毛対策にはサプリメント以外にも次のような対応策があります。
- 正しい髪のお手入れ方法を身につける
- 規則正しい生活を送る
- 行き過ぎた喫煙や飲酒を控える
それぞれ具体的に解説していきます。
正しい髪のお手入れ方法を身につける
(出典:(17)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価—頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験—)
(出典:(18)毛髪にかかる負担を軽減するための吸引式ヘアドライヤーの開発)
(出典:(19)入院患者の頭髪および頭皮のブドウ球菌の汚染状況と洗髪による汚染除去の効果)
薄毛対策のためには正しい髪のお手入れ方法を身につけましょう。
誤った髪のお手入れをしてしまうと頭皮環境を悪化させ、薄毛や抜け毛につながります。
たとえばシャンプーは頭皮を清潔に保つうえで重要ですが、過剰な洗髪はかえって頭皮環境の悪化を招きます。また髪を自然乾燥させると雑菌が繁殖したり、長時間キューティクルが開いた状態になったりして、頭皮や毛髪がダメージを受けやすくなるでしょう。
シャンプーは適度に行い、洗髪後はドライヤーですばやく髪を乾かすのが薄毛対策には有効です。
規則正しい生活を送る
(出典:(20)男子大学生における夜間睡眠の乱れと自律神経系活動の関係)
(出典:(21)画像解析によるマウスの体毛成長の評価)
(出典:(22)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
規則正しい生活習慣を意識することも薄毛対策に有効です。十分な睡眠・ストレスの解消・適度な運動習慣を心がけましょう。生活習慣が乱れて睡眠不足になった場合、毛髪の成長に欠かせない成長ホルモンの働きが阻害され、薄毛や抜け毛を招く恐れがあります。
またストレスはホルモンバランスが乱れる要因のひとつとされており、毛髪の成長や毛周期に悪影響を及ぼすといわれています。適度な運動は血流改善効果も期待できるため、髪の健康に必要な栄養素が頭皮に届きやすくなるでしょう。
このように規則正しい生活習慣は、健康な髪の成長に多面的に関わっています。薄毛対策を考えている方は、まず生活習慣から見直してみてください。
行き過ぎた喫煙や飲酒を控える
(出典:(23)地肌マッサージの頭皮への作用)
(出典:(24)e-ヘルスネット ニコチン)
(出典:(25)厚生労働省eJIM > 海外の情報 > 亜鉛)
過度な喫煙や飲酒を控えることも薄毛対策に有用です。
タバコの中のニコチンには血流を悪化させる作用があります。喫煙を控えれば血流を改善し、頭皮や髪に必要な栄養素が届きやすくなります。
一方アルコールは髪の成長に必要不可欠な亜鉛の吸収を阻害する成分です。健康な毛髪を育てるためには、過度なアルコール摂取は控えましょう。
薄毛対策やサプリメントに関するよくある質問
有名人や専門家が推薦しているサプリの方が効果がある?
(出典:(26)健康食品の正しい利用法)
サプリメントの中には有名人や専門家の推薦を受けている商品も多数ありますが、これらは必ずしも効果の高さとは一致しません。
それが専門家だったとしても、ひとりの人間だけが主張している場合、その信頼性には疑問を挟む余地があります。有名人の場合も同様です。
また「受賞した」「特許を取った」などの情報にも注意が必要です。それらが事実だとしても、必ずしもサプリメントの効果を保証するものではありません。
宣伝に踊らされることなく、製品について冷静に判断する心構えが大切です。
有効成分が入っている製品なら信用できる?
(出典:(27)健康食品の正しい利用法)
有効成分が入っていることをうたっている製品でも、表記の仕方によっては効果に疑問が残る場合があります。
たとえばトクホマークのついた商品は、たしかに人に対して一定の有効性や安全性が評価されています。しかし単にトクホと同成分の配合をうたっているのみでトクホマークが付いていないサプリの場合、有効性が保証されているわけではありません。
このような理由から成分の情報と製品自体の情報とは切り離して考えるべきです。
海外のサプリメントは効く?
(出典:(28)健康食品の正しい利用法)
海外のサプリメントなら効く・効かないとは一概には言いきれません。
インターネットを利用した個人輸入のサプリメントの中には、無許可で薬の成分を添加しているものもあります。このような製品を使用することで重大な健康被害を受けた事例も実際にあるため、十分な注意が必要です。
サプリメントだけ取っていれば薄毛は防げる?
(出典:(29)健康食品の正しい利用法)
通常のサプリメントでもトクホ商品でも、サプリメントさえ摂っていれば薄毛を防止できるというわけではありません。
どんなに優れたサプリメントであっても、その目的はあくまで食事では摂取しきれない栄養の補助や健康のサポートです。食事や生活習慣への配慮をしながらサプリメントを利用することで、初めて十分な効果が見込めます。過剰にサプリメントに頼るのはやめましょう。
まとめ
サプリメントは薄毛対策に一定の効果が見込めます。しかしサプリメントだけに頼る生活では十分な効果は期待できません。健康な生活習慣のサポートとして、サプリメントを上手に活用していきましょう。この記事で紹介したサプリメントの服用のポイントや選び方なども参考にして、薄毛対策に役立ててください。
文献
1).5).国際抗老化再生医療学会雑誌, 2018; 1: 40-42
2).3).4).粉砕 61巻 (2018) p.84-87
6).日本皮膚科学会雑誌:127 (13) , 2763-2777, 2017 (平成29)
7).British Journal of Dermatology
8).ファルマシア 51巻 (2015) 3号 p.187-192
9).皮膚5巻 (1963) 1号 書誌
10).13).14).15).16).26).27).28).29).厚生労働省医薬食品局食品安全部
11).体力科学 50巻 (2001) 5号 p.647-650
12).「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
17).日本香粧品学会誌 41巻 (2017) 1号 p.15-22
18).科学・技術研究 2巻 (2013) 1号 書誌
19).愛知県立大学看護学部紀要vol.21 (2015) p.21-29
20).大正大學研究紀要 第106輯
21).川崎医療福祉学会誌 28巻 (2018) 1号 p.125-133
22).日本温泉気候物理医学会雑誌 78巻 (2015) 4号 p.353-362
23).日本化粧品技術者会誌 48巻 (2014) 2号 p.97-103
24).e-ヘルスネット 厚生労働省
25).厚生労働省eJIM
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』